東京地方裁判所 平成元年(特わ)308号 判決 1989年7月04日
本籍
秋田県大館市字長倉六三番地
住居
東京都新宿区新宿一丁目一二番一号
サンサーラ第三御苑七〇一号
無職
中田信
大正一二年二月三日生
右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官渡辺咲子出席の上審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役六月及び罰金一六〇〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは、金一〇万円を一日に換算した期間、被告人を労役場に留置する。
この裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、株式会社大館製作所ほか一社から役員報酬を得ていたものであるが、昭和六二年中に自己所有の土地・建物を譲渡したことによる同年分の所得税を免れようと企て、譲渡収入の一部を圧縮するとともに買換資産の取得価格を水増し計上する等の方法により所得を秘匿した上、同年分の実際総所得金額が七四七万四〇円、分離課税による長期譲渡所得金額が三億二七三三万四一九五円あった(別紙一損益計算書参照)のにかかわらず、同六三年三月五日、東京都新宿区三栄町二四番地所在の所轄四谷税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が七四七万四〇円で、分離課税による長期譲渡所得金額が一億二八一万三五九三円であり、これに対する所得税額が二五八三万六四〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書(平成元年押第四五七号の1)を提出し、もって不正の行為により、同六二年分の正規の所得税額九三二三万二二〇〇円と右申告税額との差額六七三九万五八〇〇円(別紙二脱税額計算書参照)を免れたものである。
(証拠の標目)
一 被告人の当公判廷における供述
一 被告人の検察官に対する供述調書二通
一 収税官吏作成の領置てん末書
一 収税官吏作成の次の各調査書
1 譲渡収入金額調査書
2 買換資産の取得価額調査書
3 譲渡資産の取得費調査書
4 譲渡費用調査書
一 検察事務官作成の捜査報告書
一 押収してある所得税確定申告書等一袋(平成元年押第四五七号の1)
(法令の適用)
一 罰条
所得税法二三八条一・二項
二 刑種の選択
懲役刑と罰金刑の併科
三 労役場留置
刑法一八条
四 懲役刑の執行猶予
刑法二五条一項
(求刑 懲役六月及び罰金二〇〇〇万円)
よって、主文のとおり判決する。
(裁判官 中村俊夫)
別紙一
修正損益計算書
中田信
自 昭和62年1月1日
至 昭和62年12月31日
<省略>
別紙二
脱税額計算書
中田信
昭和62年分
<省略>